■「世界のスタンダードに照らした評価を」
2024シーズンのJ1では、ヴィッセル神戸が縦に速いサッカーを進化させて連覇を成し遂げた。初のJ1昇格でいきなり3位に食い込んだFC町田ゼルビアも、中長距離のパスを有効活用してシンプルに相手ゴールへ迫った。
メディア上での評価はどうだったか。
神戸も町田も、順位ほどは高くなかった。サッカーが面白くない、という声も聞こえた。メディアが好感を持って報じたのは、ポゼッションスタイルのアルビレックス新潟だった。その新潟はルヴァンカップで決勝まで勝ち上がったものの、J1リーグでは残留争いに巻き込まれている。
チームの結果とメディアの評価が必ずしも一致していないことに、もっと言えば世界のトレンドと日本人のサッカー観との乖離に、清水エスパルスの反町康治ゼネラルマネージャー兼サッカー事業本部長は疑問を抱くのだ。
「あるチームが30本パスをつないで得点したら、すぐに動画サイトにアップされる。けれど、少ないパスがスピーディーにつながって得点した場面はアップされない。
記事を書く方々もコメントする方々も、メッシのいるFCバルセロナが見せたサッカーが一番だと思っていて、その幻影にずっと付きまとわれているのでは。
24年のJ1で言えば、優勝した神戸も、2位の広島も、3位の町田も、非常にスピーディーな攻撃をしていた。サッカーはゴールへ向かってプレーするもの、ゴールを守るもので、神戸は守る、取り切るというところのクオリティが高い。ボックス・トゥ・ボックスで走れる選手が揃っていて、武藤(嘉紀)や大迫(勇也)のような実績のある選手が必死にやっている。 そういうところを、もっともっと評価しなきゃいけない。
でも、神戸や町田のサッカーは、必ずしもメディアから賞賛されなかった。メディアが好感を持って伝えたのは、パス本数がもっとも多かった新潟だったのでは。
ヨーロッパを見れば、ハイインテンシティでスピーディーなサッカーが明らかに主流となっている。世界の最先端は、縦に速い。Jリーグを伝えるメディアの方々も、そういう流れを踏まえて報道をしてほしいと思うのです」