■「ダブルチーム」はW杯で勝ち上がるための条件
日本サッカー界の発展を願うからこその提言は、昨秋に発売された著書『サッカーを語ろう 日本サッカー協会技術委員長1457日の記録』(小学館)にも盛り込まれている。現職就任後の反町GMは、森保一監督らスタッフと選手たちへの配慮から、日本代表についての言及は避けてきた。今回はチームや個人の評価ではなく日本サッカーのあるべき未来図を広く共有する観点から、日本代表について触れてもらった。
「2022年のカタールW杯後に森保監督とも話したのは、“同じようなレベルのチームがふたつできるようにしなければ。ダブルチームで戦えるようにならなければ”ということです。あの時点では、ちょっとそこは足りなかったかな、と。
カタールW杯のラウンド16で対戦したクロアチアは、日本代表との延長前半の途中に、ルカ・モドリッチとマテオ・コヴァチッチを交代させている。延長後半の途中には、イヴァン・ペリシッチもベンチへ下げた。ノックアウトステージでは延長戦があり、連戦で疲労も重なってくる。そのなかで勝ち上がるには、主力選手でもずっとピッチに立たせるわけにはいかない。つまり、ダブルチームが必要なのです。
いまの日本代表は、たとえば左ウイングなら三笘薫と中村敬斗が、それぞれに個性を発揮している。CFでは小川航基が台頭してきた。ダブルチームにしても、かなり高いレベルを見せることができる。
コロナ禍を経て5人交代が恒常化していくなかでは、4人目、5人目の選手のレベルがポイントになっていく。それは日本代表だけでなく、我々エスパルスにも言えることです。
今シーズンからJ1リーグのエントリー上限が、18人から20人へ増えます。チーム全体のクオリティを上げることで、2人増えることをメリットにできる。
JFAの技術委員長在任時には、高校卒業後の選手たちにいかに実戦の機会を与えるのか、というポストユースについて議論を重ねました。エスパルスのGMの立場からも、若い選手の成長につながる環境作りは意識しています。
トップチームが攻守にインテンシティの高い、躍動感のあるサッカーを目ざす。J1リーグという舞台でトップチームがそういうサッカーを見せることが、若い選手たちの成長につながると考えます」
反町GMが作り上げていくサステナブルなチーム作りが、3シーズンぶりのJ1でどこまで存在感を発揮するのか。世界基準に即したサッカーを見られるのかも含めて、エスパルスの今シーズンに注目が集まる。