■当初は厳重も…次第に「手抜き」に
というわけで、世界を放浪していると、あちこちで荷物検査を受けることになります。
いちばん身近なのはスタジアムでしょう。
1982年のスペイン・ワールドカップは運営面で問題だらけの大会でしたが、手荷物検査もスタジアムによってバラバラ。いや、同じスタジアムでも行くたびに対応が違っていたりしました。
検査はセキュリティーのためでもあり、また治安対策でもありました。
スペインでは、独裁者だったフランシスコ・フランコ総統が1975年に死去。彼が後継者として育てたフアン・カルロスが国王に即位しましたが、フアン・カルロス国王は、意外にも急速に民主化を進めました。しかし、フランコという“重し”が取れたことで、カタルーニャやバスクの独立運動が盛んになり、バルセロナで行われた開幕戦の前には会場のカンプ・ノウ周辺で独立運動派がビラを撒いて、治安部隊と小競り合いを繰り返していました。
そんなわけで、開幕当初は手荷物検査はかなり厳重でした。しかし、その後、手荷物検査の係員たちの仕事ぶりは手抜きになっていき、最初はカメラまで持ち込み禁止だと言われて困惑していた人も多かったのですが、そのうちカメラなど見向きもしなくなり、その一方で突然、傘の持ち込みが禁止されてしまうなど、いい加減なものでした。