■ポジションセンスに優れた「エース」

 ボールを拾ったのは、サウジアラビア右サイドバックのサウド・アブドゥルハミド。日本陣左のスペースに大きなパスを送るが、これは確実にポジションを取った板倉滉が頭で中盤に戻す。相手との間に落ちた少し際どいボールだったが、ボールに寄った守田英正は平然とワンタッチでセンターサークル内の南野拓実にボールを送る。

 ボールに触れずにターンして前進した南野は、当たりにくるサウジアラビアDFアリ・ラジャミを軽くかわすが、すぐ背後にいたDFハッサン・カディシュにボールを奪われる。それを拾ったアリ・ラジャミが左に開いたサレム・アルドサリに展開、サレム・アルドサリは内側からサポートにきたMFナセル・アルドサリにワンタッチで渡し、そのまま斜めに動いて日本のバイタルエリアに向かう。

 ナセル・アルドサリはターンして内側を向き、中央からサポートにくるMFムサブ・アルジュワイルへパス。受けたムサブ・アルジュワイルは、少し左に持ち出す。この瞬間の両チームの選手たちの位置を示したのが、<シーン1>である。黒丸数字がサウジアラビアの選手。日本選手は赤丸数字で示してある。

 このとき、日本選手は、ボールを持ったムサブ・アルジュワイル⑦の左を南野⑧がおさえ、右からは鎌田⑮がアプローチしている。最前線やや左にポジションを取るFWフェラス・アルブライカン⑨には板倉④がしっかりとマークについている。しかし、サレム・アルドサリ⑲は戻ろうとする守田⑤と遠藤航⑥、そしてDFライン中央の谷口彰悟③の中央、「重心点」でストップ。さすがにサウジラビアのエースは優れたポジションセンスを持っている。

PHOTO GALLERY ■日本代表「奇跡の10秒」を読み解く展開図
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