■前半は「一方的な試合」だった
しかし、この時点でも広島有利は変わらないかと思えた。それほど、前半は広島の一方的な試合だったからだ(まるで、アジア予選で戦う日本代表のようだった!)。
浦和はパスの展開が遅く、ボールを止めてから、次のパスを出す間に時間がかかった。そこに、広島がハイプレスをかけてボールを奪って、アップテンポな攻撃を仕掛けた。ボールを奪って前の選手に預けると、後方の選手がどんどん追い抜いていく。そうした、集団的な攻撃がこのチームの持ち味だが、テンポの遅い浦和のプレーが広島の良さを引き出していた。
後半も、このままのペースでいけば広島が逆転するのは、それほど難しいことではない……。スタンドで見ている僕はそう感じていた。
ところが、ピッチ上で戦っている広島の選手たちの気持ちは違っていたようだった。
まだ焦る必要はないのに、広島の選手は平常心を失っていた。そして、恐がっていた。
前半、あれほど効果的だったハイプレスは影を潜め、逆に浦和の選手たちが広島ゴールに襲い掛かった。広島のGKの大迫敬介も浦和の西川に対抗して好セーブを連発して関根や渡辺凌磨、ブライアン・リンセンのシュートを防いでいたが、54分、松尾のクロスにリンセンが頭で合わせて、浦和は2点目を挙げた。