■Jリーグの大きな「カンフル剤」に
こうした問題はあるものの、「マルチオーナーシップ」は、国内からの新たな投資を一部IT企業に頼らざるをえない状況にあるJリーグにとっては、大きなカンフル剤になる可能性を秘めている。
この10月、レッドブル・グループは、2025年1月からグループの「グローバルサッカー部門」の責任者にユルゲン・クロップが就任すると発表した。ドイツ人のクロップは、ボルシア・ドルトムントを率いてブンデスリーガに旋風を起こし、プレミアリーグのリバプールでも一時代を築き、今年5月、56歳の「若さ」で監督業から身を引いた。
レッドブルとRBライプツィヒはドイツ国内では嫌う人が多いようだが(「成り上がり」のクラブが嫌われるのは、洋の東西を問わず同じようだ)、日本でも信奉者が多いクロップがサッカー部門のトップに就いたことは、新しく「レッドブル・ファミリー」の一員となった大宮アルディージャにとっては歓迎すべきニュースに違いない。
横浜F・マリノスでは、シティ・グループは株式の一部しか持っておらず、全面的にその影響下にあるわけではない。しかしそれでも、シティ・グループの指導下でポステコグルーという監督を持ち、チームは「革命」と言っても過言でないような変わり方を見せた。
大宮はレッドブル・グループが100パーセント所有するクラブであり、この後どのようにもクラブを変えることができる。レッドブルの「テクニカルダイレクター」であるマリオ・ゴメス(元ドイツ代表FW)は、「大宮の歴史と伝統を尊重する」としながらも、自分たちのネットワークとノウハウを生かし、3年から4年をかけてJ1に昇格し、2030年にはタイトルを争い、AFCチャンピオンズリーグに出場することを目指すと語る。