名将クロップが「責任者」に、ファミリー大宮「今後の目標」とレッドブル「真の狙い」【大宮アルディージャだけじゃない、Jクラブ買収「マルチオーナーシップ」の大問題と可能性】(3)の画像
レッドブル・グループは今後、日本のサッカーにどのような影響を与えていくのか。撮影/原壮史(Sony α1使用)
 サッカーは世界中で愛されているスポーツである。日本から世界へと羽ばたく選手がいる一方で、近年は世界が日本のクラブに興味を示すことも。近年、世界的な大資本が複数のクラブを保有する「マルチオーナーシップ」が流行しているが、その波が日本に到達したという。この9月には、世界的な飲料メーカーが大宮アルディージャを買収したが、今後も起こりうると警鐘を鳴らすのは、サッカージャーナリスト大住良之だ。そうした「マルチオーナーシップ」は、日本のサッカー界へ、どのような影響を与えるのか? 「問題点」と「可能性」を考察する。

FIFAやUEFAが「警戒」も…

 だが、「マルチオーナーシップ」には、大きな問題がある。国際サッカー連盟(FIFA)や欧州サッカー連盟(UEFA)は、こうした事業が始まった頃から、警戒の目を光らせてきた。クラブを強化するために度を越した投資が行われれば、スポーツとして公正な競争でなくなってしまう懸念があるからだ。たとえば、年間10億円の収益しかないクラブに投資家が数百億円を投じ、有力な選手を買い集めれば、アッという間にチャンピオンにすることができるだろう。

 さらに、現代のサッカーでは、クラブは国内のみで活動するのではなく、国際大会もある。オーストリアのレッドブル・ザルツブルクがチャンピオンとなり、ドイツのRBライプツィヒがブンデスリーガ上位に進出すれば、当然、UEFAチャンピオンズリーグのような重要な大会で両者が対戦するケースも出てくる。

 UEFAはこのケースをよく検討し、現時点の結論としては「問題はない」ということになったという。ともにレッドブルの影響下にあるとはいえ、両クラブは完全に別の独立した法人であり、RBライプツィヒではレッドブルが株式の49%を持っているものの、レッドブル・ザルツブルクではメインスポンサーにすぎないという解釈だったからだ。

 ただし、UEFAの大会では、レッドブル・ザルツブルクは「FCザルツブルク」と表記され、クラブマークも「レッドブル」の商品マークそのものからサッカーボールを入れたものに変更させられた。「RBライプツィヒ」は、「RB」が「レッドブル」の略ではなく、「芝生ボール競技」の略である以上「RBライプツィヒ」で出場しているが…。それでも、UEFAの大会で使うスタジアム名も、両クラブとも変更を余儀なくされた。両クラブは今季もチャンピオンズリーグに出場している。

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