■「前から来るけど戻らない」のスカウティング
上海海港はここまでのACLEの3試合で5得点に対して7失点。攻撃に特化する分、守備にも隙があるとスカウティングされていた。際が続ける。
「前から来るけど(守備には)戻らない、というのもあった。だから、なおさら(攻め上がった自分に)ついてこない、と思っていたので」
デュエルで圧倒して相手を沈黙させる。際が優位に立てた背景には、ホームに鹿島アントラーズを迎えた1日のJ1リーグ第35節がある。前半だけで3失点を喫した完敗に、鹿島戦を欠場した際はスタンドで悔しさを募らせていた。
「だからこそ、今日は技術どうこうよりも、気持ちの部分で相手を上回ろうと思って試合に入りましたし、それが前半の3点につながったと思う」
左ではサイドバックの三浦颯太と、サイドハーフに入った家長昭博のコンビネーションで上海海港を制圧した。意図的に自らが外に張り、中に入る家長とで相手を幻惑した三浦は、試合前に家長から飛ばされた檄をこう明かした。
「アキさん(家長)からは『お前が左の突破口になれ』と言われていました。そうした意識づけが先制点につながったと思っています」
開始12分。ゴールラインぎりぎりまで左サイドを鋭くえぐった三浦が浮き球のクロスをあげる。相手のクリアが小さくなったところを、家長が利き足とは逆の右足でボレーを叩き込んで先制すると、わずか1分後には瀬川も続いた。