“らしい”プレーだった。10人であっても関係ないと言わんばかりである。10月23日のACLE第3戦。上海申花のホームスタジアムに乗り込んだ川崎フロンターレの脇坂泰斗は、敵陣で押し込もうとするチームの真ん中にいた。
前半5分でマルシーニョが退場処分となったことで、数的不利なまま時間を経過。前半24分に失点を喫したものの、まずは追いつくべく、後半、時間が経過するとともにボールを持つ動きを強める。
相手を引き付けてパスを出すプレー、GKチョン・ソンリョンから直接パスを引き出すポジショニング、後半アディショナルタイムの苦しい時間でも裏に抜けようとする走り、そして、ピンチとなれば最終ラインまで全速力で戻る――。
「あれはもう“全部、自分がやらないと”と思って。GKから受けて、前進してっていうところは、もう自分がやらないと」
そう脇坂は振り返るが、「全部、自分がやらないと」の文字から受けるようなエゴはない。むしろ、他の選手が見せていたいくつかの場当たり的な攻撃を見ながら、「よりゲームを難しくしてしまう」と考え、そうならないように、背中でけん引した。
「ある程度 相手を引きつけて、味方を半歩だったり、一歩ぐらいフリーにさせるのは得意であるので、それができたシーンもありました」
味方がプレーしやすくなることで、チームを押し上げたい。脇坂のプレーの根源には、その思いがあった。