日本で言えば、晩秋のような冷え込みだった。敵地・中国に乗り込んで行われた川崎フロンターレと上海申花の一戦。10月23日という暦で言えばそれに相応しい気温かもしれないが、日本から来た身としては着こみたくなるほどの肌感だ。
そんな寒さを無視するかのような熱気を、脇坂泰斗は帯びていた。試合後の上海大運動場のミックスゾーンでのことである。顔も目も、赤みを帯びている。
悔しさか、怒りか――
感情を言葉で確認してしまうほどに、高まるを何かを感じさせた。その質問に、脇坂は筆者と目をまっすぐ合わせながら、「悔しい、ですね。はい。単純に。10人でね、いいところも……点を取れそうな感じはあったし……。悔しいです」と答える。
キャプテンとして、いちプレイヤーとして、アジア制覇を狙う者として、残り少ない鬼木達監督との試合を勝利で飾るため、何より、ピッチで躍動するため。消化できぬさまざまな感情が、短く重ねた言葉に込められていた。
だからこそ、開始5分のプレーには厳しい言葉も出す。
「もちろん負けはみんなの負けですし、みんなのせいですし、失点もみんなのせいなんですけど、退場は個人で改善できるところもあると思う。それを本人はすごい反省してたので、次にやらないようにというか、いらないプレーだと思うので、それはチームで共有した方がいいと思います」
チームをまとめる立場として、あえて言葉にしてみせた。