2年越しの悲願成就へ向けて、舞台は完璧なまでに整っていた。
清水エスパルスのホーム、IAIスタジアム日本平には、今シーズン最多となる1万8284人ものファン・サポーターが駆けつけていた。目の前の相手、モンテディオ山形に勝てば、その瞬間に3シーズンぶりとなるJ1昇格が決まる。
20日に行われたJ2リーグ第35節が動いたのは75分。両チームともに無得点の均衡を破ったのは清水のキャプテン、FW北川航也だった。
「うまく自分のところにボールが転がってきてくれたし、それに詰めていく判断も早かった。先制点を取れたことは、よかったと思っています」
右サイドからMF矢島慎也があげたクロスが、MF髙江麗央の頭をかすめてコースを変え、ゴール正面のMFカルリーリョス・ジュニオにわたる。背番号10は迷わずに右足を振り抜くも、相手キーパー後藤雅明が懸命に阻止した直後だった。
ニアサイドにポジションを取っていた北川が、DF安部崇士より一瞬早くこぼれ球に反応。右足でボールを押し込み、5試合ぶりの先制点を清水にもたらした。
2桁ゴール到達へ王手をかけてから、10試合連続で無得点が続いていた9月7日のV・ファーレン長崎戦後の公式会見。その間もすべて1トップで先発させてきた北川へ、秋葉忠宏監督は全幅の信頼を込めてこう言及している。
「このクラブを小さな頃からずっと見てきて、このクラブで育ってきたわれわれのエースでありキャプテン。もちろん本人が一番点を取りたいと思っているだろうし、フィニッシュのシーンも数多くある、あとはケチャップと一緒でいつ出るか。彼は1週間の準備のなかでしっかりとやるべきことをやっているし、彼が日々取り組む姿勢を信頼しているからこそ、何度でも試合で使いたいと思わせてくれる」