■退任が決まって一番最初に思い浮かんだこと

ルヴァンカップの前にはそういう話になってました」
 鬼木監督がそう話すように、チームとはルヴァンカップ・準々決勝のアルビレックス新潟戦の第1戦を前に話し合いがもたれたという。
「去年の経験を踏まえて早めにちょっと話しましょうっていう話をしていて、本当はもう少し早いタイミングで来年について話せればよかったんですけども、連戦もありまして、お互いなかなか“いつ”っていうのが定まらなかった中で、自分の中でもルヴァンを迎える前にはしっかりと」
 こう話して、話し合いの時期を定めた経緯を話す。
 選手に伝えたのは、16日の朝。「ルヴァンが終わるまでは、基本的にスタッフにも話してなかったです。ルヴァンに集中してほしかったっていうのもあるので、そこは話さずに入りました」という。
「退任が決まって一番最初に思い浮かんだことは?」
 晴れ晴れとした表情の鬼木達監督にこう尋ねると、「なんですかね……?」と頭をかしげ、再び、「なんですかね?」と笑顔を見せる。監督を務めただけでも8年、選手時代から数えれば26年もフロンターレのために戦っていたのだ。その短い「なんですかね?」の間には、幾多の思い出が浮かび上がったはず。うれしいこと、くやしいこと、受け入れがたいこと、誇れること――。
 そして口を開いた鬼木監督は、「でもやっぱり、初年度の優勝とかになってくるんですかね」と答えを出した。「それか、今日のみんなのよそよそしさかもしれないですけども(笑)」と選手やスタッフの反応をジョークにして交えながらも、「優勝になるのかな。やっぱりあの光景っていうのはね、なんか、そうですね……。みんながずっと悔しい思いをしてたところで、しかも、ああいう劇的な感じだったので、何かやっぱりああいうものになってくるんですかね」と振り返った。
 そしてやはりと言うべきか、鬼木監督にそのタイトルについて聞けば、「自分が取ったものではない」と言うのである――。
(取材・文/中地拓也)
(後編へ続く)

(2)へ続く
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