■甲府が突いた鹿島とのミスマッチ

 しかしながら、天皇杯にめっぽう強い甲府は難敵だ。この日も5-4-1の布陣でスタートし、鹿島とのミスマッチを突く作戦を取ってきた。鹿島の左サイドで言えば、藤井智也が相手右ウイングバック(WB)の飯田貴敬、須貝がシャドウの三沢直人についている間に、後方から関口正大が空いたスペースに侵入するといった形で攻略してきたのだ。

 前半29分の甲府の先制点はそんなサイド攻略から生まれた。濃野公人が守っていた右サイドで宮崎が三平和司とのワンツーからクロスを上げ、逆サイドから入ってきた三沢がドンピシャヘッドでゴール。鹿島はまたも劣勢を強いられてしまったのだ。

「前半は守備のところで中盤の選手たちがいい距離感を保てなかった。相手が5人いる中で我々は4枚。そこで我々のサイドハーフがどちらもサイドに開いてしまうと、2人のボランチでカバーするのは難しくなる。スライドと中に絞ることがうまくいかなかった」とポポヴィッチ監督も指摘したが、主力組が揃っていなくなると守備の連動性が出にくくなる。メンバー固定の弊害は今季の鹿島の課題だが、そこはシーズン半分が過ぎても改善しきれていないようだ。

 それでも藤井が前半終了間際に個のスピードで同点弾を挙げ、1-1で折り返したことで後半に希望が見えてきた。指揮官は温存していた鈴木優磨や名古、柴崎らを次々と投入。終盤にギアを上げていく。そしてラスト1分というところで柴崎の右CKから植田が打点の高いヘッドを決め、辛くも2-1で逆転勝利。甲府という難しい相手を乗り越えることに成功したのである。

  1. 1
  2. 2
  3. 3