■男子との相似
そして、皇后杯準決勝での広島やEL埼玉の健闘が示しているように、WEリーグの下位チームも、上位チームにどのように抵抗するのかという方法を身に着けつつあるようなのだ。
こうして、WEリーグ全体のレベルが上がったことによって、「なでしこリーグ」との戦力格差はこれまでより広がった。
その結果、今年度の皇后杯では準々決勝進出の8チームはWEリーグのチームによって占められてしまった。「なでしこリーグ」勢の戦力が落ちたとは思えない。だが、それ以上にWEリーグ勢の力が上がったのである。
観客動員に関しては依然として苦戦が続いているWEリーグだが、チーム強化という意味ではプロ化の成果が出始めていると言っていいのではないだろうか。
男子のJリーグも、ここ数年レベルアップは著しい。
川崎フロンターレや横浜F・マリノスが攻撃的なサッカーでJリーグのタイトルを独占。それに対抗するために、他のチームの守備やカウンター戦術が発展して、2023年シーズンではショートカウンターを武器にしたヴィッセル神戸が初優勝した。
一方、J1リーグのレベルアップは次第に下部リーグに波及。一昨年はアルビレックス新潟がパスをつなぐスタイルでJ2リーグを制覇したし、2023年にはFC町田ゼルビアが堅固な守備を武器にした新しいスタイルを確立している。
J2リーグのレベルアップは、一昨年の天皇杯全日本選手権でヴァンフォーレ甲府が優勝したことや、その甲府がAFCチャンピオンズリーグ(ACL)で各国の1部リーグ上位チームを破ってグループステージを首位通過したことでも明らかだ。
そうしたレベルアップの波は、2023年シーズンではJ3リーグやさらに4部相当の日本フットボールリーグ(JFL)にも及んできている。
女子サッカーでも、現在はWEリーグ上位チームの成長が下位チームの成長を促す段階にあるようだし、いずれ近い将来にはそのレベルアップの波が「なでしこリーグ」にも及んでいくことだろう。