■アジア杯優勝以上に意味があること
そうした攻撃パターンを作る上で、ぜひほしいのがボールを収めることのできるワントップだ。ワントップとしては、ようやく上田綺世が国際試合でも力を発揮できるようになってきた。だが、「ボールを収める」プレーとしては、大迫勇也を凌ぐ選手はまだ見つかっていない。
タイ戦では、ワントップとして細谷が90分間プレーした。ワントップでありながら、得点に絡んだのが74分のCKの場面だけ(相手のオウンゴールを誘発)だったのは寂しいし、批判を受けても仕方ないかもしれない。
だが、前半の相手の裏を取るためのパターン作りでは、細谷はうまくターゲットとしての役割を果たしていた。
たとえば、13分には伊東からの浮き球のパスをスペースに入り込んだ細谷がしっかりと収めて、ペナルティエリア内に走った伊東に戻して決定機を演出した。日本代表の攻撃の起点を作るターゲットとしての大きな可能性を感じた場面だった。
細谷も「カタール合宿」の間に代表でのプレーに慣れて大きく成長してほしい選手の一人である。
2023年11月に行われたワールドカップ・アジア2次予選のミャンマー戦、シリア戦に続いて、元日のタイ戦でも5対0で圧勝した日本代表。「アジア相手には5ゴール」というのが一つの指標になりそうだ。アジアカップのグループリーグで対戦する3試合もこれらの試合と同格の相手ばかりだ。様々なトライをしながら、しっかりとゴールを決めながら勝ち進んでいくことは間違いないだろう。
1か月の長期合宿を通じて様々な攻撃パターンを確立できたならば、UEFAチャンピオンズリーグやヨーロッパリーグを控えた選手たちは決勝戦出場を免除して早めにクラブに戻すことも考えていいのかもしれない。
彼らがCLやELで勝ち進んでハイレベルの試合を経験することは、選手たちにとっても、日本代表にとっても、「アジアカップ優勝」以上の意味があるからである。