■年代を超えたコーチングスタッフ会議での共有内容
日本代表のサポートについて一つ一つ丁寧に説明する山本NDは、こうした蓄積と分析の重要性について、こうも続ける。
「そういうデータがあるから、メディカル、フィジカル、コーチのグループの中で、SAMURAI BLUEから育成のところまで共有された情報を元に、睡眠、食事、移動、暑熱対策なども踏まえて、どういうトレーニングするかを決めています。
データをさまざまな年代に生かすと同時に、反町康治技術委員長が始めたプロジェクトチームで、フィジカル、ゴールキーパー、ストライカーキャンプという風に分野別でも生かす。とにかく、いろんなことにトライしています」
また、こうした情報の共有も含め、さまざまな年代を結び付けて化学反応を起こすための「会議」も行われているという
「年代を超えたコーチングスタッフ会議があり、SAMURAI BLUEからU―15までみんなで世界のトップ基準を常に共有しています。オリンピック世代やユースの選手から上の年代の代表へのパスウェイを作って、スムーズに成長していけるようにすることも含めてですね。具体的には、“こういう選手がもう下の代表にいるよ”などという話を共有しているんです。
たとえば、10月のSAMURAI BLUEに来てもらった船越優蔵コーチは、U―18日本代表の監督として活動していて、次は2025年U―20W杯に挑みます。2026年には北中米ワールドカップがありますから、そのU-20W杯に出場した選手が1年後にSAMURAI BLUEに入ってきて、北中米のピッチに立つぐらいの基準で育ててほしいとリクエストしています。
そのためには、世界やSAMURAI BLUEというトップの基準が分からないと、その年代の選手に要求するレベルも分からない。だから10月のシリーズでSAMURAI BLUEと一緒にやってもらって、スピード感をもっと持ってもらいたいと考えていました。
U―18日本代表メンバーにも、U―17W杯を終えたばかりの選手が入ってきています。だから“この世代で強いチームを作る”というよりも、その上にどんどん繋がってけるような、飛び級の選手が出てくる、下からどんどん押し上げてくるようなことがいいと思っています・
SAMURAI BLUEでも、鈴木彩艶や細谷真大は2024年パリオリンピック世代です。そういう例がどんどん増えてくるのは、日本サッカーにとって大事なことですね」
日本サッカー協会が描く代表の強化は、点と点のような単発なものではない。すべてがさまざまにつながり、そして、大きい意味で日本のためになるように、さまざまなトライが繰り広げられているようだ。
■山本昌邦プロフィール■
やまもと・まさくに 1958年4月4日生まれ。
選手時代をヤマハ発動機サッカー部(現・ジュビロ磐田)で過ごし、サッカー日本代表としてもプレー。引退後は指導者の道を歩み、同部でのコーチを務める。その後、日本代表のコーチとしてフィリップ・トルシエ氏やジーコ氏を支え、2004年のアテネ五輪では日本代表監督を務める。そして、ジュビロ磐田の監督に就任し、Jリーグでも指揮を執った。今年2月から、日本サッカー協会のナショナルチームダイレクターの職に就く。