12月3日をもって、2023年のJリーグが全日程を終えた。ヴィッセル神戸の優勝や東京ヴェルディの16年ぶりのJ1復帰などの結果が出たが、Jリーグには数字だけでは測れない変化があった。2023年のJリーグを、サッカージャーナリスト後藤健生が振り返る。
■シビアな戦いが増えたJ3
J1リーグの優勝争いが最終節を待たずに決着してしまったため、最終週の話題をさらったのは東京ヴェルディの16シーズンぶりのJ1復帰だったが、「個人能力の総和」としては圧倒的な存在感を放っており、昇格候補の筆頭と見なされていた清水エスパルスを破った試合は、城福浩監督が1年半にわたって鍛え上げてきた東京Vのプレー強度の高さによるものだった。財政力が乏しいため、毎年のように主力選手が流出している東京Vが集団的なプレーを突き詰めることで昇格を成し遂げたことは高く評価すべきだろう。
今シーズンは、さらに下部のJ3リーグと日本フットボールリーグ(JFL)のレベルアップも顕著だった。
一つの要因は、今シーズンからJ3リーグにも降格制度が設けられたことがある。
クラブの昇格、降格というのはクラブの経営に直結する、ある意味で優勝争いよりも重要な出来事だ。とくに、J3リーグからJFLに降格するというのは、クラブにとっては死活的な問題となる(今シーズンはJFLで昇格条件となる2位以内に入ったチームがいずれもJリーグ・ライセンスを持っていなかったため、J3リーグ最下位のギラヴァンツ北九州は降格を免れたが)。
そんな事情もあって、J3リーグでシビアな戦いが繰り広げられたという側面もある。
だが、それ以上に、J1リーグに始まって、J2リーグに波及してきた高いプレー強度といった傾向が次第に下部リーグにまで及んで日本サッカー全体のレベルが上がったことが、J3リーグやJFLの充実につながったと考えるべきだろう。
JFLでは、アマチュアの雄、Honda FC(本田技研)が早々と優勝を決めたが、2位以下は大混戦が続いたが、今季JFLに昇格(復帰)したブリオベッカ浦安が最終節の勝利で逆転で2位に滑り込んだ(そのおかげで北九州が命拾いした)。
浦安は、リーグ戦前半では苦戦を強いられたが、後半戦では連勝を続けて準優勝に辿り着いた。今ではベテラン監督となった都並敏史監督が集団的なサッカー・スタイルの見事なチームを作り上げたのである。