■アメリカ最強チームのFW
アメリカは準決勝でアルゼンチンに1-6で敗れたものの、この大会のセンセーションとなった。当時のアメリカはサッカーブームにあり、すでにプロリーグがあって欧州から数多くの選手が渡ってきて、アメリカ国籍を獲得して出場していた。ロングパスを基本とするパワフルなサッカーと、それぞれの選手の実力を見れば、準決勝進出は驚きではなかった。
ただ、パテナウデの活躍は、そのアメリカ代表にも意外だった。彼はフランス系の両親をもち、東部のマサチューセッツ州で生まれてアメリカでプロになった選手だったが、このワールドカップ以前に代表に選ばれたことはなく、この大会を終えた後にアメリカ代表が立ち寄ったブラジルとの親善試合(3-4の敗戦)で2点を取った後、再び代表に選ばれることはなかったからである。パテナウデのアメリカ代表での記録は、出場4試合、6得点だった。
当時のアメリカのプロリーグの最強チームはマサチューセッツ州のフォール・リバーFCだった。アメリカ代表のボブ・ミラー監督は、そのFWコンビであるパテナウデとビリー・ゴンサルベスでアメリカの攻撃を強化しようとしたのだ。なにしろこのクラブに在籍した4年間で、パテナウデは114試合に出場して112点、ゴンサルベスは116試合に出場して69得点。こんなFWが並んでいたら、フォール・リバーが無敵だったのは無理もない。