サッカーは時代とともに進化していく。近年の大きな変化はGKのプレーだ。「ゴールキーパー」ではなく「ゴールプレーヤー」と呼ぶべきだと主張する声も上がるポジションについて、サッカージャーナリスト・大住良之が深掘りする。
■奇妙な試合
Jリーグ第18節、5月24日に埼玉スタジアムで行われた「浦和レッズ×川崎フロンターレ」は、非常に奇妙な試合だった。
試合自体は緊迫感があり、とても見応えのあるものだった。今季序盤につまずいた川崎だったが、ベテランMFの大島僚太が先発で起用されるようになってから「川崎らしさ」が復活し、この試合でも精密なパスワークから浦和のゴールに迫った。一方の浦和も、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)決勝を戦った精神的疲労からようやく回復し、今季就任したマチェイ・スコルジャ監督のサッカーの浸透度も高まってハイレベルなサッカーで川崎と互角に戦った。だがこうしたハイレベルな試合で生まれた得点は、非常に思いがけないものだった。
後半8分、浦和のゴールキック。いつものようにペナルティーエリア内に開いた両センターバックのどちらかにつないでビルドアップを始めようとしたGK西川周作だったが、前線の状況を見てロングキックに切り替えた。このプレーを読んでいた川崎GK上福元直人がペナルティーエリアを大きく出てヘディングしてクリア。しかし浦和のMF関根貴大がセンターサークル内でこのボールを拾い、ワンコントロールすると思い切ってシュート。
50メートルの距離から放たれたシュートは、川崎ゴール前でワンバウンドすると、そのままゴールネットに突き刺さったのだ。