■「声をかけたかった」
時間がなかったこともあって、会話はわずか数分。それでも、最後にもう1回会いたいと思った両者の気持ちがあればこそ、実現したひと時だった。
私服姿の2人は抱擁をし合うような格好で、感情と雰囲気がとても伝わる1枚だが、チャナティップがいつも通りの人懐っこさで指揮官に別れを告げたことで、両者の表情を寂しさではなく笑顔が占拠したのだった。
選手が空港に行くのは知っていたが、「選手は選手でああいう場で盛り上がりたいだろうけど俺がいたら気を遣うだろうし」との思いがあり、「送別会に行ったらいろんな人が気を遣うだろうから。できるだけ少ない人数の方がいいかなと思って」。
気を遣いながらも、教え子を見送りたかったからこその数分。
「声をかけたかった」
そう振り返る鬼木監督の表情はとても柔和で、そして素敵だった。
(取材・文/中地拓也)