ペレがオレンジボールをけっていたのは、貧しくてサッカーボールを買ってもらえなかったからだったという。現在のブラジルは当時とは比較にならないほど豊かになったのだが、まだまだ貧困層は多く、少年たちはこんな「ボール」で一対一をしたり、リフティングをして遊んでいるという。そしてそうした少年たちから、これまで数多くのプロ選手、ブラジル代表選手が生まれているというのだ。
■リフティングが育むもの
クラマーさんが言うように、リフティングを何十万回できるようになっても、それでサッカーのスターになれるわけではない。それは、前述した「ギネスもの」の記録をもつ人びとがけっしてリオネル・メッシやクリスティアーノ・ロナウドどころか、プロサッカー選手でもないことで十分わかる。
しかし少年少女たちに日々接している日本のコーチたちが信じているように、ボールリフティングはサッカーへの導入となるボール感覚やボディコントロール、そして集中力などを養うことができる。サッカーそのものではないが、サッカーの大事な要素を含み、サッカーの楽しみも味わえるボールリフティング。
さて、床に脱ぎ捨ててあるシャツでもけり上げてみるか…。