■ブラジルが伝え続けるサッカー文化

 延べ床面積6900平方メートルのミュージアムには、ブラジルとともに世界のサッカー史も併せた展示が行われていた。感心したのは、それぞれの出来事とともに、その当時のブラジルや世界の社会の重大な出来事が豊富な画像や映像で紹介されていたことだ。自国のサッカーの歴史を世界との対比でとらえるだけでなく、そのときどきの社会の流れで考える―。これこそ、「サッカー文化」というものではないだろうかと、大いに感心したわけである。

 その展示の最後のほうに、ガラス張りの立派なケースにとんでもないものが収められていた。ブラジルの少年たちがけったりリフティングしたりして遊んだ「ボール」である。しかしただのサッカーボールではない。靴下を丸めたもの、新聞紙を丸めてヒモでグルグル巻きにしたもの、いわゆる「プチプチ」をテープで丸めたもの、紙とテープ…。

 こうしたものならまだ、「ボールの代用」として想像はつく。しかしレモン、ヒョウタン、ソーダ飲料のアルミ缶、さらにはマッチ箱、ビンのセンなど、まったく丸くないもの、小さなものまで、少年たちはけって遊んでいるというのである(これは「現在進行形」である)。

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