■終わらない物語
だが「FAシルバーカップ」の物語はここでは終わらない。長くFIFA理事を務め、日本サッカー界の「顔」として世界との架け橋となってきた小倉純二さん(2010~2012年JFA会長)は、1世紀近く前にFAから友情の証しとしてプレゼントされた「シルバーカップ」を、強制されたといえ、戦時中に失ってしまったことを長く気に病んでいたという。そこで2011年3月、JFAが創立90周年を迎えるに当たり、カップの復元を決意、謝罪を兼ねて復元の許可を得るためにFAにデービッド・バーンスタイン会長を訪ねた。
この話に驚き、同時に感激したのが、バーンスタイン会長だった。JFAではなく、FA自体がカップを復元して再び日本に贈呈してくれることを、その場で約束してくれたのである。カップ贈呈式はその年の8月にロンドンのウェンブリー・スタジアムで行われ、この年の天皇杯から再び優勝チームに授与されるようになった。ちなみに、この年の天皇杯決勝戦は大木武監督率いる京都サンガF.C.と大熊清監督率いるFC東京の間で争われ、FC東京が4-2で勝ち、真新しい「FAシルバーカップ」が小倉会長の手から今野泰幸主将に手渡された。