■湧き上がる盛大な拍手

 私は観念し、席を立ってマイクの前まで歩いた。そして、できるだけたどたどしく、紙切れの言葉を一語一語読んだ。

 「コモ、ジョルナリスタ、オフィシアル、ダ、コパ・トヨタ…」

 しかし読んでいるうちに、どうしたことか、どんどん芝居心が涌いてくるのを抑えることができなくなった。そして最後の3語は、1語1語区切りながら、意味を込めて力強く読んでしまったのである。

 「ヴォテ、シャパ、ウン!(シャパ・ウンに投票しよう!)」

 その瞬間、数百人をのみ込んでいたと思しき体育館が爆発した。集まった全員が大きな叫び声を上げたのだ。そして誰もが立ち上がり、やがて盛大な拍手となった。

 食事会はそれでお開きになった。だが私とサワベ・カメラマンにとって本当に大変だったのはそれからだった。参加していた全員が私たちを囲み、サインと握手をねだったのだ。断ることなどできない。それから1時間近く、私たちはせっせとペンを走らせ、そして握手し、ときにハグされた。ホテルに戻ったのは、午前1時に近かった。

 これが私が「政治利用」されたてん末である。

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