■敗戦が迫るなかで執念の同点弾
後半開始とともに、秋葉監督は3枚替えをする。4月のルヴァンカップで長期の戦線離脱から復帰し、この日がJ2リーグ戦初先発となったボランチのヘナト・アウグスト、それに2トップのオ・セフンと北川をベンチに下げ、MF宮本航汰、乾、チアゴ・サンタナがピッチに立つ。
後半開始時点での3枚替えは、秋葉監督からの強烈なメッセージだった。果たして、清水は攻撃のギアを一気にあげていく。
4-2-3-1の1トップにチアゴ・サンタナが入ることで、前線にポイントを作れるようになる。縦へ差し込むパスがクロスやシュートにつながり、攻撃の厚みが増していく。両サイドバックも敵陣深くまで侵入する。
徳島陣内での攻防が続くなかで、秋葉監督は積極的に交代カードを切る。63分、ディサロに代えてMF中山克広が送り込まれる。68分には右SB岸本武流を下げ、MF西澤健太が起用される。重心をはっきりと前に置き、徳島のゴールをこじ開けようとする。
後半は何度も相手ゴールに迫り、決定機も作り出した。徳島に1本のシュートも許さない。ゴールだけが、足りない。
しかし、アディショナルタイムに突入した90+3分だった。左CKを獲得すると、神谷がニアサイドへライナー性のボールを供給する。GKの前からニアサイドへ走り込んだDF井林章が、フリーでフリックする。ファーサイドへ流れてきたボールは、マーカーの死角をとったDF鈴木義宜が頭でプッシュした。キャプテンの執念の一撃が、チームを敗戦から救った。
土壇場でドローに持ち込んだ試合後、フラッシュインタビューに臨む秋葉監督は険しい表情を浮かべていた。
「後半は素晴らしかったですが、あれを45分ではなく90分やらないと、勝点3なんて入ってこないですから。もう一度全員で気を引き締めて。また中3日でホームに帰れますから、後半に見せたのが本来の姿ですから、あれを見せて必ずホームで勝点3を取りたいと思います」
ホームのIAIスタジアム日本平へ帰る次節は、いわきFCを迎える。J3から昇格してきた対戦相手は3連敗中で、順位を20位まで下げている。
清水にとっては力の差を見せつけなければならない一戦だ。チームとしての胆力が求められる。