■シャツなしでプレー

 マンチェスター・ユナイテッドはこのシーズンからナイキ社製のユニホームを着用していたが、やはり同じ形式で、赤いユニホームに黒いアンダーシャツが付属しており、着脱に手間がかかった。得点した直後はするっと脱げたのだが、試合が再開され、いざ着直そうとしても、汗をかいていることもあり、シャツ部分とアンダーシャツ部分がからみあってどう着ていいかわからない状態だったのだ。

 だがリードはわずか1点。当然、相手は猛攻に出てくる。ひとり足りない状態など許されない。思い余ったフォルランは上半身裸のまま左手でユニホームをつかんでプレーにはいり、味方からのパスを受けた。そして直後にボールを奪われると、ボールをもって前進するサウサンプトンのジェイムズ・ビーティーを追い、追い抜いて体を入れ、味方にバックパスをするというプレーまでやってのけたのである。

 さすがにこの後レフェリーに注意されてタッチラインの外に出ると、チームのスタッフに助けてもらって無事ユニホームを着たのだが、プレミアリーグでも前代未聞の珍事件だった。この当時は「ユニホームを脱いだらイエロー」というルールはなく、サウサンプトンの1点を決めたファブリス・フェルナンデス(フランス)も得点後ユニホームを脱いだのだがおとがめはなかった。

 ただ、フォルランの場合、シャツなしでプレーに加わってしまったのだから、当然ルール違反(ルール第4条)で、イエローカードに値すると思うのだが、出されていない。

(2)へ続く
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