■フォルランの狂喜
この年の1月にアルゼンチンのインデペンディエンテから移籍したフォルランだったが、スターぞろいのユナイテッドではなかなかポジションをとれず苦しんでいた。そうしたなか、出番が回ってきたのが11月3日、ホームのサウサンプトン戦だった。1-1で迎えた後半34分にフィリップ・ネビルに代わってピッチに送り出されたフォルランは、めぐってきたチャンスを逃さなかった。残り5分、相手陣でパスを受け、2歩もつと、ペナルティーエリアの左外から思い切って右足シュート。ボールはゴール右上隅に吸い込まれた。
試合終盤の見事な勝ち越しゴール。狂喜したフォルランは、左のコーナーに向かって走りながら赤いユニホームを脱ぎ、コーナーの外の観客スタンドまで走って喜びを分かち合った。後にフォルランが語ったところによると、オールド・トラフォードのその観客席には、兄弟や友人がいたのだという。
やがてプレーが再開されるが、フォルランはユニホームを着るのに手間取っている。この年、2002年ワールドカップに向けて主要メーカーがつくったユニホームのシャツは、ユニホームとアンダーシャツを一体化させたもので、とても複雑だった。高温多湿になる日本の夏に備えたもので、覚えているファンもいるかもしれない。日本代表用のユニホームを提供したアディダス社製のシャツも同様の形になっており、試合後のユニホーム交換のときに選手たちは苦労していた。