■2021年の先発落ち
その西川に大きな転機が訪れたのは2021年だった。リカルド・ロドリゲス監督の1年目、開幕からゴールを守り続けていた西川だったが、第12節にアビスパ福岡に0-2で敗れるとロドリゲス監督はユースから昇格したばかりの18歳の鈴木彩艶にチャンスを与える。そして西川は、6試合もベンチから試合を見続けることになる。ようやく第19節の柏レイソル戦で先発に復帰すると、以後、不動のGKとなった。
西川のプレーは、ベンチで過ごした6試合の前と後では安定感が大きく違ったように感じた。そしてその安定感は、2021年より22年、さらに22年より今季と、年を追うごとに増してきているように思う。36歳にして、西川は年ごとに、試合ごとに成長しているのだ。
その理由のひとつが、現在まだ20歳の鈴木の存在であるのは間違いない。U-17日本代表で大活躍して世界に注目された逸材。190センチ、91キロの恵まれた体と圧倒的な身体能力を生かしてゴールを守り、現在は来年のパリ五輪を目指すU-22日本代表の主力GKである鈴木は、「2026年ワールドカップの日本の守護神の有力候補」とさえ言われている。その能力は、西川に代わって浦和のゴールに立った2021年の6試合でも十分証明されている。
この「怪物級」の若手GKをさしおいて、フィジカルな能力としては平凡なGKである西川がゴールに立ち続けるには、並大抵の努力では足りない。その危機感が36歳にして成長を続ける西川を支えている。