■今からすべきPK戦対策
キッカー選びのポイントとしては、GKとの相性も考えるべきだ。
GKの中にはキッカーと駆け引きをしてコースを予測して動くタイプもいれば、勘で動くGKもいる。あるいは、キッカーが蹴る瞬間まで動かずに反応するタイプもいる。
日本人選手のPKとして思い出すのは遠藤保仁の「コロコロPK」だが、キッカーと駆け引きをしたり、ヤマを張ったりするGKにはこれが有効だ。だが、相手の動きを最後まで見るタイプのGK相手には「コロコロPK」は決まらない。最後まで動かずに反応するリヴァコヴィッチのようなGKには、たとえばゴール中央に強いキックを蹴り込む本田圭佑のようなキッカーの方が有効かもしれない。
こうした点で、僕が感心したのはジネディーヌ・ジダンで、相手のGKのタイプによってさまざまなキックを蹴り分けていた。
さらに特殊な条件が加わることもある。
日本にとって忘れられないPK戦と言えば、2004年アジアカップ準々決勝のヨルダン戦だろう。1対1のままPK戦に突入。日本はいきなり中村俊輔と三都主アレサンドロが連続して失敗。ここで、キャプテンの宮本恒靖がレフェリーに対して「ペナルティースポット付近の芝生が軟弱なのでゴールを変えるべきだ」と主張。反対側ゴールに移ってからはGK川口能活の神がかりのセービングもあって、0対2の状態から日本が逆転したのだ。
しかし、芝生が軟弱だということは事前に分かっていたはずだ。それなら、立ち足を斜めに大きく踏み込んでキックする中村や三都主ではなく、直線的に助走をつけて立ち足に力がかからないタイプのキッカーを選ぶべきだったのだ。
もちろん、PK戦というのはあくまでも抽選の代わりであって、いくら周到な準備をしても必ず勝てるものではない。90分での勝利を目指すべきだ。だが、勝利の可能性をほんの数パーセントでも上げるためには十分な準備と相手チームのGK、キッカーについての情報収集を行っておくべきなのだ。
4年後にベスト8を目指すつもりなら、すぐにでもPK戦の研究と対策に着手すべきだろう。