■ドイツで目にした黒いマーケット

 こうして手に入れた入場券でしたが、フランクフルトのユースホステルに泊っている時に決勝戦と3位決定戦の入場券を盗まれてしまったという話は「放浪記」の第1回「いちばん美しいチケット」の巻に書きました。

 警察は僕をドイツ・サッカー協会(DFB)のオフィスまで連れて行ってくれましたが、再発行はもちろんできず、僕は3位決定戦の前日にミュンヘンの中心マリエンプラッツ広場で決勝戦と3位決定戦のチケットを入手しました。

 当時のヨーロッパでは、余った入場券を転売することは普通に行われていることでマリエンプラッツでは大勢の人たちがチケットのやり取りをしていました。このやり取りのことはドイツ語で「シュヴァルツマルクト」(ブラックマーケット)と呼ばれていました。

 とにかく、この「シュヴァルツマルクト」のおかげで、2試合の入場券はほぼほぼ定価で手に入れることができました。

 それ以来、ワールドカップの度にいわゆる“ダフ屋行為”を見かけたり、売り手としても、買い手としても体験してきました。

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