大住良之の「この世界のコーナーエリアから」第102回「ワールドカップでも普通に見逃される反則とは?」(2)世界中で発達した新たな武器「ロングスロー」の画像
1990年ワールドカップでベルギーのDFエリック・ゲレツがスローインをした直後。手の形に注目してほしい。完全な「左手1本投げ」であることがわかる。当時、彼は有名な「ロングスロワー」だった。(c)Y.Osumi

 サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト・大住良之による、重箱の隅をつつくような、「超マニアックコラム」。今回は、世にも珍しいサッカー独自のボールの投げ方。

■さまざまなロングスローワー

 イングランドでは1930年代からときおり「ロングスローの名手」が登場し、ファンを沸かせてきた。後にリバプールで伝説的な監督となるビル・シャンクリーという人物がいる。1933年、彼はイングランドのカーライルでプレーしていたのだが、夏のオフを故郷のスコットランドの小さな村で過ごしながらあるトレーニングをしていたという言い伝えがある。家並みを超えてボールを投げ、地元の子どもたちに拾わせては投げ続けたという。

 イングランドで近年有名だった「ロングスローワー」は2013年までストーク・シティなどで活躍したMFロリー・デラップである。ライナーのボールをファーポストまで投げ、その距離は46メートルに達したと言われている。彼は中学生時代まで陸上競技の槍投げの選手だった。

 東南アジアのブルネイ国立大学は、2006年にロングスローの研究結果を発表し、世界の注目を集めた。30度の角度で投げると、最も高い高度に達し、同時に空気抵抗を最少にするという。

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