サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト・大住良之による、重箱の隅をつつくような「超マニアックコラム」。今回は、「1点と2点の間のゲーム」。
■チェルシーを激変させたモウリーニョ
「クリーンシート(無失点)」はGKやDFたちの目標ではあるが、実際には、今季の横浜FMの記録でもわかるように、チャンピオンになるチームでも1試合に1失点は覚悟しなければならない。だがこの「法則」に反するチームがときおり出る。たとえば2004/05シーズンのチェルシー(イングランド・プレミアリーグ)である。このシーズンの38試合で、チェルシーはわずか15失点しかしなかったのである。1試合平均0.395点という驚異的な低さである。
このシーズン、チェルシーは実に50年ぶりのイングランド・チャンピオンとなった。それだけでなく、「クリーンシート」が25試合(!)もあったのである。アウェー勝利数(15試合)、アウェーでの最少失点(9点)、シーズン最多勝利(29勝)も、プレミアリーグ記録として、今日まで残っている。
名門とはいえ、実際には古ぼけたロンドンのクラブだったチェルシーをロシアの富豪ロマン・アブラモビッチが買収し、大きな話題になったのがこの前年。さっそく多額の投資が行われ、2年目の2004/05シーズン前にはFCポルトをUEFAチャンピオンズリーグ優勝に導いたジョゼ・モウリーニョを監督に招聘してさらにチームを強化。またたく間に強豪の仲間入りを果たし、モウリーニョ1シーズン目で優勝を果たしたのである。
GKは、このシーズン前にフランスのレンヌから移籍してきたチェコ代表のペトル・チェフ(当時22歳)である。38試合中35試合に出場し、鉄壁の守りを見せて「最優秀GK賞」を受賞した。チェフはこのチェルシーでの活躍で「世界ナンバーワンGK」の名声を築いていく。