■スポーツとエンターテインメントのバランスの難しさを痛感させられた
ただし、コーナーキックを蹴って終わるべきだった、とも思わない。もしスコアが動いていれば、アディショナルタイムを超過した状態でのゴールとなり、浦和側は到底納得いかないだろう。
スポーツである部分とエンターテインメントである部分との曖昧な部分のバランスを、万人を納得させる形でコントロールすることがいかに難しいのか、ということを考えさせられる瞬間だった。
湘南サポーターに続き、浦和サポーターからもブーイングが飛んだ。
ただし、そちらは審判団に対してではなく、チームに対してのものだった。
試合前から、浦和サポーターの怒りは明らかだった。『優勝争いすら出来ない無様な結果。死ぬ気で掴もうとした男は誰?来季は覚悟ある男と闘いたい』と書かれた長い横断幕があったからだ。ゴール裏の最も目立つ場所に位置するそれは、試合中も撤収されなかった。
リカルド・ロドリゲス監督は、この試合で前線にキャスパー・ユンカー、ダヴィド・モーベルグ、アレックス・シャルクを並べた。セレッソ戦では守備を打開することができず、外側でボールが動くだけでシュートまで持ち込めない、というパフォーマンスを見せてしまった。モーベルグとシャルクが両サイドから個で打開を試み、ユンカーの抜け出しという飛び道具も使う、という狙いは、前線だけ見ればその通りに試合を進めていた。
谷の好守や、シュートのタイミングで湘南ディフェンス陣が見せた粘り強さによって0-0が維持されたが、ゴールを脅かす、という回数はセレッソ戦から格段に増えた。
しかし、チーム全体はまだ低調だった。指揮官は「今回の試合はここまでやってきたサッカーとは違うものになった」と振り返っている。