5分と表示されたアディショナルタイムは、いつ終わってもおかしくなかった。
湘南はコーナーキックを獲得し、阿部浩之がキッカーとしてボールをセット。ゴールキーパーの谷晃生がハーフウェイラインまで出てきて大声と身振りで指示を飛ばし、間違いなくこれが最後になるであろう攻撃の準備を進めた。
浦和の守備も、これで終わり、という認識で総出だ。
両チームの、さあラストプレーだ、という緊張感が高まった次の瞬間、試合終了の笛が吹かれた。
湘南の選手たちは当然猛抗議をした。
岡部拓人主審は時計を示し、理解を求めた。この時、中継映像では『95:37』だった。5分と表示されていたアディショナルタイムは、90+6分台に突入していたのだ。試合が終わる正当な理由はあった。
しかし、簡単に納得できるタイミングではなかった。
もし、ボールがラインを割った瞬間に終了を伝えられていれば、コーナーキックだったのに、という抗議はあれど、今がラストプレーだった、という納得の仕方ができる。
守備側の浦和の選手たちはどうだったのかというと、リスクが回避されたことを喜ぶのではなく、やや拍子抜けのままピッチ中央へ歩いて行った。。
攻撃側が、たとえゴールにならなかったとしてもプレーさえあれば納得できたように、守備側も、やる、というモードになった以上、跳ね返してすっきりと終わりたかったのかもしれない。
ラストプレーに備えてスイッチを入れ直していたのは選手たちだけではない。サポーターも、熱を帯びた後だった。楽しみを取り上げられたような後味の悪い幕切れになってしまい、湘南サポーターから思わずブーイングが飛んだ。