■「Jリーグ以前」のようなサッカー

その大邱を相手に全北が攻めた。120分の試合を通じてポゼッション率では全北が74.3%と圧倒した。だが、全北は大邱の守りを崩せない。攻撃の型に変化がなさすぎるのである。

 右サイドはサイドハーフのハン・ギョウォンに預けて、サイドバックのキム・ムンファンが追い越してクロスを上げる形。そして、左サイドではキム・ボギョンがポイントを作り、サイドバックのキム・ジンスがサポートする形。こちらのサイドでは攻撃のバリエーションも豊富だった。が、チーム全体としては攻めのアイデアに欠けていたと言わざるを得ない。

 それでも、全北は後半開始から35秒で大邱の守備をこじ開けて見せた。中盤でメン・ソンウンが大きく右に振り、右サイドハン・ギョウォンが入れたクロスにワントップのソン・ミンギュが合わせてボレーで決めたものだ。

「これで、全北の勝利が決まり!」と思われた。だが、全北戦の神戸と同じようにその後の試合運びは拙劣で、先制点が決まってから10分後にはロングボールからゼカが抜け出して、大邱があっけなく同点とする。そして、その後も一進一退が続き、PK戦突入かと思われた121分(つまり、延長後半のアディショナルタイム)に、交代で出場したばかりのキム・ジンギュが押し込んで、全北がようやく勝利をつかんだのだ。

 つまり、この試合はリーグ戦で下位に低迷する大邱が引いて守りを固めたのに対して、上位の全北が攻めあぐねたという膠着状態が120分間続いたのだ。守備から攻撃への切り替えも遅かったし、CKやFKからのリスタートも遅く、まるで30年ほど前の(つまり、Jリーグ以前の)サッカーを見ているかのようだった。

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