■指揮官が試合前に選手に話したこと
サポーターも、ジェジエウのその痛々しい姿を見ていたからこそ、決勝弾に心を揺さぶられた。歩くこともままらなない選手が、気持ちだけでゴールを奪ったのだ。等々力競技場が揺れすら感じさせる熱狂に包まれたのは、当たり前のことだった。
鬼木達監督は、試合前に選手に対して「一番大事になるのは気持ちの部分。そして覚悟、勇気という部分」と話したという。ここ2試合は、新型コロナの陽性者が相次いだことで、ベンチメンバーすらそろわない状態だった。紅白戦もできなかった。それでも、優勝を賭けた大一番に求められるのは勝利のみ。ジェジエウが足をつりながらもピッチで戦ったのは、指揮官の言葉のように“覚悟”を決めていたからだ。
試合は、今季のJリーグで1番、2番を争うようなハイレベルな内容となった。どちらも攻撃を志向し、遅行と速攻を使い分けながら、そして、相手の急所を探りながらボールを出し入れした。
試合の途中で主審が負傷で交代するイレギュラーな出来事もあった。その間、ゲームは止まり、何が起きたか把握できない選手もいたようだった。その結果、ロスタイムは異例の9分。集中が切れてもおかしくない展開だったが、最後に試合を決めたのは“気持ち”だった。