夏の最中、日本中でサッカーが行われている。日本クラブユース選手権も、そのひとつ。準決勝の2試合を、サッカージャーナリスト・後藤健生が取材した。
■前半だけで4ゴールが生まれた試合
僕はこれまでずいぶん沢山の試合を観戦してきたが、前半終了時点で試合が打ち切られ、抽選で決勝進出チームを決めるというのは初めての経験だった。
群馬県前橋市を舞台に開催されている第46回日本クラブユース選手権(U-18)大会準決勝での出来事である。
準決勝の2試合目は、横浜F・マリノスユース対柏レイソルU-18の試合だった。
開始7分。俊足の左サイドハーフ、1年生(16歳)の白須健斗がドリブルで中に切れ込んで豪快なシュートを決めて横浜FMがいきなり先制。さらに、14分にも左CKから内野航太郎のヘディングが決まって、横浜FMはリードを2点差に広げた。
さすがに、J1リーグで首位を走っている横浜FMの下部組織らしく、サイドバックの攻撃参加などアグレッシブなチーム攻撃で、試合はこのまま横浜FMの勝利に終わるのかとこの瞬間は思われた。
ところが、横浜FMの攻勢は長くは続かない。
2点をリードしたことで慎重になってしまったのか攻撃が淡泊になり、またパスにズレが生じる場面も増えてくる。パスの出し手と受け手の意思疎通に齟齬が生じ始めたのだ。
すると、飲水タイム明けに柏が反撃に移る。
ロングボールを使って左右に大きく振って横浜FMの守備陣を揺さぶり、26分にはPKを獲得して山本桜大が決めて1点差とすると、前半のアディショナルタイム(40+4分)には左サイドでつないで、最後は中村拓夢のクロスを山本が頭で合わせて同点とする。
そして、ゴールが決まった瞬間、谷弘樹主審が前半終了を告げた。
アディショナルタイムの目安である“3分”が15秒ほど過ぎた時間に生まれた同点ゴールだった。横浜FMが、一瞬でも柏の攻撃を遅らせることができていたら、主審はクロスが入る前にホイッスルを吹いていただろう。
そして、このゴールは単なる同点ゴールではなかったのだ。