■男子代表との大きな相違
さて、さきほども触れたが、来年のFIFA女子ワールドカップを目指す日本女子代表は現在チーム作りの真っ最中だ。なぜなら、女子代表の池田監督は2021年の東京オリンピック終了後に就任したので、監督就任からまだ1年も経過していないのだ。
男子代表の森保一監督の場合、就任から半年後の2019年1月にアジアカップ(UAE開催)があり、就任から1年が経過した2019年夏頃にはオリンピック代表(当時のU-22代表)と並行して数多くの選手をテストして「ラージグループ」の形成に躍起になっていた。そして、そのころにはカタール・ワールドカップはまだ3年も先の話だった。
池田監督の場合も、就任から半年でアジアカップがあり、またU-20女子代表の監督も兼任しているなど、当時の森保監督と状況はかなり似ている。そして、E-1選手権では当時の森保監督と同じように「ラージグループ」の形成やチーム・コンセプトの浸透を図っていた。
ただ、就任1年後の森保監督と決定的に違うのは、ワールドカップまでわずか1年の時間しか残されていないということだ。つまり、「ラージグループ」の形成と並行して、そろそろ2023年のワールドカップに向けてチームの完成度を上げていかなければならないのだ。
しかも、新型コロナウイルス感染症の影響もあって、チーム作りが順調に進んでいるわけではない。“格下”のセルビア、フィンランドには快勝し、海外組抜きでE-1選手権でもなんとか優勝を飾ったが、残り1年間で“格上”の強豪とも戦えるようにチーム力を引き上げるのは簡単な作業ではない。
日本女子代表は2011年のドイツ・ワールドカップで優勝し、2012年のロンドン・オリンピック、2015年のカナダ・ワールドカップでも連続して決勝に進出した。しかし、その後は結果が出せていなかった。
その間、パスをつなぐサッカーに固執していた女子代表だったが、池田監督に交代してからは激しくボールを奪い、奪ったボールを早く大きく展開するというコンセプトを掲げて世界と戦おうとしている。だが、そのコンセプトを経験の浅い選手たちも含めて、浸透させていかなければならないのだ。
そうした事情を考えると、このE-1選手権は池田監督にとっては実に貴重な機会だったということになる。ここで得られたさまざまな情報を生かして、残り1年間でどこまでチーム力を上げられるか。これからも見守っていきたい。