また、この数年、平均年齢17歳台のチームで戦っているセレッソ大阪堺(現在はなでしこリーグ)は、相手陣内のスペースを見つけてそれを利用して、大きなサッカーをすることで、数年年齢が上のチームと互角に近い戦いができていた。昨年の、なでしこリーグで優勝を遂げた伊賀FCくノ一も、スペースを使ってのサッカーがうまい(現在スウェーデンのAIKストックホルムでプレーしている林穂之香も、そんなセレッソのサッカーの中心選手だった)。

■浸透してきた新たなサッカー

 大雑把にいえば、日本の女子サッカー界ではパス・サッカーを徹底して追及するベレーザと、よりスケール感の大きいサッカーをする他のチームとのせめぎ合いが続いているのである。

 高倉麻子監督時代までは「なでしこジャパン」の栄光の時代をもたらしたパス・サッカーを追求し続けた日本代表だったが、高倉監督の後を継いだ池田太監督は前でボールを奪う、相手ゴールを奪うといったアグレッシブさを看板に掲げることで選手たちの意識も変わっていった。しかし、昨年11月のヨーロッパ遠征ではまだ新しいコンセプトはまったく浸透していなかったし、アジアカップでは「ワールドカップ出場権を獲る」という“最低限の目標”があったために、気持ち的に縮こまったサッカーをしてしまった。

 だが、ワールドカップ出場権を確保できた現在、1年後のワールドカップに向けて選手たちの気持ちも前向きになったようだし、また、前にスペースがあればどんどんボールを前進させるという、スケール感の大きなサッカーも浸透してきた。

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