■キャリアで「安定の時期がない」長友佑都の凄さ

長友佑都選手  撮影/後藤勝

 松木にとって、そして東京の多くの選手にとっても、ひとつの指標となるのはサッカー日本代表DF・長友佑都だろう。

「長友選手に対してぼくが一番すごいと思うのは、いままでの彼のキャリアで安泰の時期というものはあったのだろうか、と感じることです。いつでも、どこでも逆境のなかでポジションを勝ち取ってきている選手なのではないかな、と。イタリアでもフランスでもそうでした。

 メディア等から様々言われながら、気づいたら必ず中心にいて活躍してチームに貢献ができるというのは、長友選手が常に成長しつづけないとできないことだと思うんですよ。それは年齢に関係なくです。彼はベテランですが、常に成長することに全力で取り組んでいる選手ですし、そういう彼の姿を若い選手や中堅の選手が見ることが、クラブに与える影響として一番大きいのかなと思います」

 FC東京で唯一の現役代表選手。現在、川崎フロンターレに在籍する選手と出身選手がサッカー日本代表の一大派閥となっているが、FC東京はFC東京で、長友に続く代表選手を輩出していかなければいけない。

「やはりFC東京で育った選手、いまFC東京にいる選手がより多く代表のピッチに立って、Jリーグのなかでも一番代表に選手を出しているのはFC東京だというふうになっていかないと、首都・東京のクラブとは言えない。そこにはこだわっていきたいと思いますね」

 生まれ変わろうとするFC東京。その変革の先にあるのは、日本代表に多くの選手を送り出し、魅力的なサッカーを繰り広げる最上のエンターテインメント集団なのだろうか――。

 まだ胎動を始めたばかりではあるが、しかしこの段階でも、山形GM、アルベル監督、長友、松木と、関わる人々の一挙手一投足が気になってしまう。これまでとは別のフェーズに入りつつある、アルベル監督率いる青赤船の航路から目が離せない。

■後藤勝 ごとう•まさる■ 中央美術学園イラストレーション科卒。中古輸入レコード店に勤務したのち、出版社と編集プロダクションを経てフリーに。サブカル方面の仕事が多かったがサッカー批評での執筆と編集補助から本格的にサッカー報道に関わり、現在はFC東京、FC岐阜、東京都の社会人を主に取材している。
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6