■U-18の選手でも「『できる』と思ったらスタメンから使う」

 そのためには「やることを揃えていかないと」と、山形GMは言う。プレーモデルを揃え、同じ評価軸でデータを比較し、定量的にやれるという根拠を得たうえで若い選手を送り込んでいる。

「これまでなら、残り10分出ました、と。それは経験させるような出し方です。そうじゃなくてもう『できる』と思ったらスタメンから使う。もちろん出場時間も長く出す。今年特別指定で来ている荒井悠汰(昌平高校)や2種登録の東廉太は『できる』と思って出している。そこで能力の確認をするためには基準を揃えていかないと。もうすでに今年のFC東京U-18は、彼らなりのアレンジはあるんですが、トップとやり方を揃えながらいっしょに取り組んでやっています」

 具体的には最終ラインからのビルドアップやハーフレーンを用いた攻撃が目につくが、ほぼ同時期のスタートだけに、つまずくところも似通っていることがおもしろい。

「(FC東京U-18)も同じような悩みを抱えてスタートしていますよね。たとえばゴールキーパーからのビルドアップは、3月に行なわれたイギョラ杯を見ているとやっぱり後ろで詰まってしまい、なかなかうまくできなかった。でも、そこを蹴らずになんとか自分で打開しようと決勝戦でもチャレンジしていた。最後に時間を使うためにキーパーが一回蹴っただけですね。あとは全部つなごうと、そこにチャレンジしてタイトルを獲ろうという、そういうところにこだわって、全員でいま一所懸命取り組んでいます。映像を使うことも可能なかぎりやっています」

 若い力の活用もさることながら、海外への移籍で薄くなっていた中堅層をピンポイントで補強した今季の編成にも、山形GMの意向は反映されている。

「おっしゃるとおり中間層の選手が少ないという課題は着任したときからずっと認識しています。その色がウチはほかのクラブよりも濃いのかなと思いますが、Jリーグ全体の問題ではないかなとも思っています。若い選手がある程度活躍したら海外に出て活躍したいという、この流れは止められないと思うんですよね。

 ですのでそれはクラブとしても応援しつつ、ただクラブとしての編成上、中堅層の選手がいないというのは安定感を欠くので、ベテラン、中堅、若手というところがバランスよく配置できるようにやっていかないといけない。その点を念頭に2022シーズンの編成をしてきました。

 山下敬大選手だったり、木本恭生選手だったり、外国籍の選手も今年25歳になったエンリケ トレヴィザン選手であったり、そういう中堅で力のある選手を最低限補強した。最低限というのは、やはりいまいるメンバーの力を私も信じているので、まず彼らと一緒に仕事をして同じ目標を共有しながらいっしょに進んでいきたいという部分を大事にしたかったからです。ただ、足りない部分には入れないといけないので、そこにはできるだけ経験のある実績のある選手を入れたい──という補強でした」

山下敬大選手   撮影/中地拓也
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