■松木玖生の加入で起きている「相乗効果」
山形GMの言葉にもあったように、やがては欧州に行くだろう選手と言えば、新加入の松木玖生が思い浮かぶ。ただしトップで本格的に戦力化してから海外移籍までが約半年間と短かった久保建英に比べると、高卒新人として開幕デビューを果たした松木の場合は主力として稼働する期間が長くなることは確実で、1年以上に及ぶことがほぼ確定的。いずれ海外クラブへ移籍したとしても、十分に元はとれるだろう。そして巣立つまでの期間、松木を十二分に活躍させることは、今後も戦力を獲得していける将来の下地づくりともなる。
「私が来る前に、スカウトのメンバーが彼(松木玖生選手)と向き合って信頼関係を築いたうえで東京を選んでもらった。そういう取り組みに対してすごくリスペクトしていますし、素晴らしい仕事をしているなと評価しています。
そのうえで松木玖生選手自身について言えば、青森山田高校の在籍期間中にヨーロッパでいろいろ練習参加したりするなかで自分に足りないところを把握し、自身を成長させてからヨーロッパに行きたいという目標設定ができています。
しかし、そういう鳴り物入りでプロになっても成功しないケースも多い。だからこそ、そうならないように我々がしっかりサポートして、FC東京に行ったから成功できたと言ってもらえるようにしなきゃいけないなという気持ちが強いですね。
選手にはクラブを選ぶ権利がある。松木玖生選手にかぎらず、若い人たちにFC東京を選んでもらえる、FC東京に行きたい、FC東京のサッカーがしたい、FC東京に行けば自分のキャリアをつくれる、そう思ってもらえるようにすることがすごく大事かなと思っています」
インサイドハーフに強度の高い選手を置く現在のFC東京で、巧さよりも強さが際立つ松木が光っている。安部柊斗との2列目のコンビはもはや看板になりつつある。
「アルベル監督はボールを上手く扱えるかということよりも、まず1対1で戦えるとか、インテンシティをしっかり持っているのかというところをすごく重要視する監督なので、そういった意味ではいまちょうど彼(松木玖生選手)が監督の思い描く像にハマっているんだろうなというのが第一印象ですね。
ただ、やはり彼にも課題があって、いいポジションでボールを受けることに関しては彼を上回る選手がウチにもいる。そういった課題を克服する為に先輩達から学ぶ事が今後の成長のためにすごく重要なことですし、実際先輩達から吸収しようと取り組んでいると思います。
逆に彼がインテンシティの高い、ボールのないところの貢献度で試合に出ることによって、そういう部分が少し足りない選手たちが松木玖生のできることをやれるようになっていかないといけない。そこが、彼が入ったことによる一番のクラブにとっての相乗効果なのかなと思っています」