■アルベル監督のサッカーも「本質」は変わらない

 そこで大切にしていきたい東京ガスの色とはなんなのか。たとえば、ひたむきさや粘り強さ、ファイティングスピリットのようなものが、過去クラブで活躍したアマラオ氏(※1)や藤山竜仁氏(※2)、浅利悟氏(※3)の時代から深く根ざしているのだとしたら、それは残しつつアップグレードしていくという想定なのだろうか。

(※1 1992年から2003年まで所属。ブラジル・イトゥアーノから加入し、ストライカーとして活躍。292試合に出場し、165ゴールを決めた。現在、FC東京アンバサダー)(※2 1992年から2009年まで所属。サイドバックやセンターバックとして活躍し、409試合に出場した)(※3 1997年から2009年まで所属。ボランチのポジションで活躍し、東京ガスから出向する社員選手として注目された。250試合に出場)

「いままでの堅守速攻型のサッカーと、これからのポジショナルサッカーと言われるものがあり、180度違うように見える部分もあります。でも1対1で勝たないといけない、奪ったらすぐゴールに向かっていくというサッカーの本質は変わりません」

 実際、2022シーズンが開幕して以降の戦いぶりを見るかぎり、昨シーズンまでの素早い攻守の切り替え、高い位置からプレッシャーをかける前線守備などの特長は失われていない。そのうえでいい立ち位置を取りパスを通していく仕事、ボールを奪われた局面でもファーストディフェンダーに連動して空いたポジションを埋めていく仕事が積み上がっている。

「いまのアルベル体制になってもそこは大事にしています。上手い選手だけをピッチに立たせるのであれば、たぶんいまのメンバーではないかもしれないし、だけれどボールを巡って戦う部分であったり、奪ってから早くゴールをめざしてしていこうとする部分に、これまでのファイティングスピリットはしっかりと残しつつ、さらに自分たちがボールを握っている時間や相手のコートにいる時間、自分たちが攻守において主導権を握る時間が増えるよう積み上げていっているイメージなので、変わるというよりはサッカー自体もいままであるものをハイブリッドにしていく。そのほうが強いチームになっていくと感じています」

 事象的にはそうなっている現状を、山形GMの構想が裏付けてくれた。そこがFC東京独自の味になり、かつ、新しいサッカーが完成しない段階でも勝点を獲っていくための武器になる。

レアンドロ選手  撮影/後藤勝
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