■「多くのエンターテインメントがあふれている東京でFC東京を選んでもらわないといけない」

 FC東京は、東京ガスサッカー部が原点で、どちらかといえば、ローカルな東京という立ち位置からスタートした。いわば地域密着のプロビンチャ的なポジションから大きくなってきたクラブだけに、広く都民全体を対象とし、さらに世界に発信するとなると、自ずと変化を迫られる。

 これまでは、コアなファンを向いた世界観を描くのであればこそ、「堅守速攻」も受け容れられやすかった。しかしインターナショナルなクラブとして世界を納得させ、広く多様な人々が住む首都・東京に受け容れられようと思うならば、これまでのサッカーに留まらない“魅力の幅”が必要になる。

「ほかの都市と異なり、東京には多くのエンターテインメントがあふれている。そのなかでFC東京を選んでもらわないといけないので、ピッチ内の魅力を出さないと。ですが勝負の世界ですから勝ち負けは大事ですし、それが経営にも跳ね返り、選手たちの生活にも影響する。やはりエンターテインメントとしてやっている以上、東京という街でFC東京の興行が上位に来て都民に選んでもらえるものにしていかないといけないですからね。

 そういう意味ではピッチ内もピッチ外もエンターテインメント性は欠かせない。そこを意識した経営、クラブづくりは現場だけでもできないですしフロントだけでもできない。お互いに協力しながらフィロフィーを揃えて一緒に進んでいくということが、これからのクラブがやらなければいけないことです」

 ただ、ミクシィグループの一員となり、新たな船出を切ったからといって、「東京ガスの魂」を忘れようとしているわけではない。むしろその反対であるようだ。

「就任したときに私からコメントを出させていただいたんですが、FC東京は東京ガスサッカー部時代から数えて今年で87年目を迎えているクラブなんですよね。86年の歴史というとヨーロッパの歴史あるクラブ並の月日です。そこを無視して前にすすむことはできない。

 念頭に置いておかないといけないのは、伝統を継承しながら新しいものを積み上げていくということ。それが新しい体制で外してはいけないことであって、特に私はクラブに合流して間もない人間ですから、クラブの伝統を自分自身も勉強しないといけない。

 何を大事にしてきたクラブなのか、どういう想いがあるのか、どんな方々が応援してきたのか。まずはそこを押さえながらつくっていく。首都・東京にふさわしいものはなんだろうということをみんなで議論しながら進んでいくことが大事だと思います」

練習で笑顔を見せる長友佑都選手  撮影/後藤勝
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