■谷口彰悟「この世で一番嫌いなもの」

 主将が主審と話している間、他の選手はベンチを見ていた。谷口もベンチに視線を送っていた。センターバックが1人少なくなる状況で、鬼木達監督はどう方針を決めるのか。そして、交代選手がいるのなら、すぐにピッチに立てる状態なのか。そのための時間作りのようだった。

 谷口にとって、DOGSOは因縁深いワードである。今年の選手プロフィールにも「この世で一番嫌いなもの」「この世で一番怖いもの」として、その名が挙げられている。しかし、そこで精神的に参るのではなく、冷静にチームにできることをしたことは、さすがと言わざるを得ない。

 3日前にノエビアスタジアムでヒーローになった5番は、この試合で退場処分となってしまった。それでも、主将としてできることはやってみせた。それに連動して、チームも動いた。勝つことはできなかった。連勝もストップした。それでも、王者の王者たる所以が表れた場面だった。

 

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