■現在も生き残る「王様」

 だがそうしたさまざまなチャレンジも、ひとつのシンプルなゲームには太刀打ちできず、消えていった。シンプルにして人びとの心をとえらえ続けているのは、現在「テーブルサッカー」と呼ばれるゲームである。

 仕組みはいたって単純だ。ピッチを模した「盤」は高さ10センチほどの「壁」で囲まれ、そこにピッチを横切るように8本ほどの「横棒」が差し込んである。その横棒のそれぞれに選手を模した人形が固定されている。1チームあたり4本(の「横棒」は、後ろから「GK」「DF」「MF」「FW」となり、両チームの横棒が交互に並んでいる。選手はGK1人、DF2人、MF5人、FW3人というような形である。すなわち、GKを背後において2人のDFは3人の相手FWと、MFは相手MFと5対5で、3人のFWは相手のDF2人と向き合う形である。

 横棒を通じて「選手」を操るハンドルは、タッチライン外の「壁」の外側についている。両側に1チームずつ。すなわち、このハンドルを操る「プレーヤー」同士は、それぞれのハンドルがあるサイドの横に立ってハンドルを操ってゲームを行うのである。ゲーム方法はシンプル。ハンドルで「選手」を左右に動かしながらボールを操り、ハンドルをくるりとひねり、「選手」を回すことでボールを「キック」するのである。

 力任せでは、目の前の相手「選手」に当たってしまう。その跳ね返りが自陣ゴールに飛び込む事実上の「オウンゴール」は、初心者にはよくある光景だ。熟練者になると、微妙にボールを扱いながら左右に動かしてキープし、相手のスキを見つけて前線にパスを送る。ただボールを正面から「キック」するのではなく、ボールの横を叩いてカーブをかけたり、思いがけない方向に飛ばしたりする。試合は時間制ではない。通常は、5点を先に取ったチーム(プレーヤー)が勝ちとなる。

(2)へ続く
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