J1リーグ第8節には、注目カードが複数あった。その中でも異色だったのがFC東京と浦和レッズの対戦だ。結果はスコアレスドローだったが、内容は熱戦だった。見どころ満載の一戦となった理由を、サッカージャーナリスト・後藤健生がひも解く。
■選手の新たな魅力を引き出す両監督
FC東京の右サイドでは互角の攻防が続いた。FC東京は右サイドハーフに永井謙佑、右サイドバックには渡邊凌磨。浦和は左サイドハーフが小泉佳穂で、サイドバックが明本考浩。明本は、オリジナルポジションとしてかなり高い位置を取り、小泉を追い越す動きを再三にわたって見せる。そして、その裏を俊足の永井が狙うという構図である。
小泉と明本は、昨シーズン、リカルド・ロドリゲス監督が就任すると同時に新たに浦和に加わった選手。いくつものポジションで起用されてきたが、攻撃的な選手である明本をサイドバックに置くというオプションは、サイドバックを使うのが得意のロドリゲス監督が作ってきたチームの一つのストロングポイントともなっている。
一方、昨年まではワントップか左サイドで起用されることが多かった永井を右で使ったのは、今シーズンからFC東京の監督に就任した同じスペイン人指導者であるアルベル・プッチ監督のアイディアだ。MFの安部柊斗も昨年までは左のインサイドハーフが多かったが、アルベル監督は右で起用している(こうして監督が交代することによって選手の新しい能力が開花するというのも、サッカーの面白さの一つだ)。
そう、この試合ではあちらこちらにさまざまなマッチアップが存在したのだが、何といっても大きかったのがスペイン出身の両指揮官同士の対抗心だったのではないだろうか。