■正座して視聴したW杯決勝

 私がサッカー部に入部したのは、中学3年生の秋のことだった。1年生のときに部活動として選んだのは、校友会誌の編集部だった。まあ、文を書いたり、雑誌などをつくる作業が、そのころからなんとなく好きだったのだろう。しかし中学3生になると、天気の良い土曜の午後に小さな部室にこもっている文化部の生活にいたたまれなくなり、わけもなく青空の下で体を動かしたいという思いがつのった。

 そんな思いを抱きながら迎えた夏休みのある日の午後、私は本当に偶然に1966年ワールドカップの決勝戦を見た。もちろん、生放送などではない。当時の日本では「ワールドカップ」になど誰も関心を払っていなかったが、新聞でイングランドが優勝したという事実だけは読んでいた。1段、10行もない「ベタ記事」だったが…。

 イングランドが2-1とリードし、試合はもう数十秒間しか残っていなかった。これで終わりだなと思った瞬間、西ドイツが同点ゴールを決めた。寝転がり、片ひじをついてテレビを見ていた私は、思わずとび起き、正座していた。そしてそれから30分間の延長戦を手に汗を握る思いで見た。そして「サッカーをやろう」。理由もなくそう思った。

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