大住良之の「この世界のコーナーエリアから」第85回「私をサッカーに引き込んだ5人の恩人」(1)中学3年生を魅了した1966年W杯決勝と、入部を「アシスト」した右ウイングの画像
1966年ワールドカップの決勝戦使用球(イングランド・ナショナル・フットボールミュージアム所蔵) (c)Y.Osumi

 サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト・大住良之による、重箱の隅をつつくような「超マニアックコラム」。今回は、「5人の恩人」。

■ショックだった友人の訃報

 最近の最大のショックは、高校時代の友人であるTくんが5年前に亡くなっていたという知らせだった。サッカー部の仲間というだけでなく、私をサッカーの世界に導いてくれた大事な友人でもあった。その死を、5年間も知らなかったなんて…。

 彼は足が速く、ドリブルがうまく、右のウイングとしてチームに欠くことのできない存在だった。長いストライドで力強く前進し、きれいにクロスを上げる彼のプレーを見て、なんども「すごいなあ」と感銘を受けたものだった。

 私がこの仕事を始めた後にも、日産自動車のファンだった彼とは、三ツ沢球技場でよく会った。そういえば、三ツ沢の近くに実家のあった彼は、高校時代、彼はこのスタジアムの南西角にあった小高い道から、入場料を払わずに日本サッカーリーグの試合をよく見ていたと聞いたことがある。その道の前には、いまは高いフェンスが設けられ、「ただ見」はできなくなっている。

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4