序盤戦で不幸な出来事が続き、早々に失点してしまった柏だったが、そこで気持ちが折れることはなかった。たしかに守備の時間は長かったが、腰が引けた守備ではなく、横浜FMが入れてくるくさびのパスを受ける相手FWに対してCBの3人がチャレンジを続けるアグレッシブな守備ができていたし、ボールを奪ったら早く前線にボールを運ぼうという意思も感じられた(もちろん、パスミスも多かったが)。また、前線では相手のDFやGKに対して積極的にプレッシャーもかけにいった。
そんな前を向くモメンタムがあったからこそ、相手のGKやDFのミスを誘発して、それがゴールにつながったのだ。また、相手にプレッシャーをかけ続けからこそ結果として警告のカードを引き出したのだ。
■「外国人選手頼み」の後遺症から脱却
実は、昨シーズンの柏にはそういう積極性が欠けていた。
2019年にはJ2で戦っていた柏。このシーズンはケニア代表のマイケル・オルンガの並外れた得点力を生かして優勝して1シーズンでJ1復帰を果たした。だが、昨シーズンはオルンガがアルドゥハイル(カタール)に引き抜かれて、結局その穴を埋めきれなかった。
攻撃面ではオルンガ頼みであり、クリスティアーノ頼みだった柏。その後遺症が大きかった。ボールを奪ったら、とりあえずオルンガなりクリスティアーノに預けておけばいい……。オルンガが不在となっても、クリスティアーノのパフォーマンスが落ちても、そういった意識がなかなか抜けなかったのだ。
さらに、シーズン中に戦術変更が繰り返されたこともあって、昨シーズンの柏は与えられた戦術をこなすのに汲々としていた印象だったし、シーズン途中で江坂任が浦和レッズに引き抜かれてしまった影響も大きかった。そして、態勢を立て直すことができないまま1シーズンが終了してしまった。
かつては試合中の積極的な戦術変更でゲームの流れを変えることができたネルシーニョ監督もどこか存在感を失っていた。
ところが、まるで「戦力ダウン」が囁かれ、順位予想でも下位に位置づけられたことに対する反発であるかのように、今シーズンの柏はチーム全体が積極的なのだ。